法人の税金関係の年間スケジュール

会社を経営していると、決算・申告以外にも様々な税金がらみの手続きが必要になってきます。

そこで、これだけはどうしても必要だという税金の支払いや手続きの年間スケジュールをまとめてみました。

 

年間スケジュール

 

この表は、従業員が10人未満・年度は4月~3月(3月決算)という前提で作ってあります

以下、手続きにより時期が毎年固定なのか・年度により変わるのか、という点にも触れながら解説しますので、3月決算でない方は気にしながら読んでみてくださいね。

 

住民税の特別徴収税額の通知(5月)

役員報酬や給与からは税金や社会保険などを天引きしますが、その中に住民税もあります。

天引きすることを特別徴収と言うのですが、この通知は「いくら天引きをするのか」が書いてあるのです。

個人の住民税は1月~12月の収入にかかり、給与等からの天引きは翌年6月~翌々年5月の12回で行います。

また、住民税は所得税のように自分で計算するのではなく、市区町村役場が計算するため、天引きがスタートする6月の前月である5月に通知が届くようになっているのです。

なお、通知は役員やスタッフがそれぞれ住んでいる市区町村から送られてきますので、人数が増えると通知の数もそれなりに増えてきますが、モレや数字の取り違いがないように注意しましょう。

 

役員報酬の改定(年度頭から3か月以内)

役員への報酬は、基本的には毎月同じ金額でなければならない、という縛りがあります。

毎月好きなように変えても良いとなると、会社の利益をそっくりそのまま役員報酬に置き換えてしまうこともできます。

結果、誰も法人税を払わなくなってしまうので「結果を見てからの利益調整」を防止するために、このような縛りがあるのです。

 

とは言っても、役員報酬を変えるタイミングが無ければ、会社を設立してからずっと同じ金額となってしまいます。

これも変ですよね。

ですので、年度頭から3か月以内であれば役員報酬を変えても良い、という仕組みになっています。

前年度の決算を確認し、それから新年度の役員報酬を考える、というのが一般的です。

 

住民税の特別徴収税額の納付(6月10日まで・12月10日まで)

給与からの住民税の天引きは、1年度分を6月~翌年5月の12回に分けて行います。

天引きをした住民税は、本来は「毎月」それぞれの市区町村へ納めます。

ですが、従業員が10人未満の法人は「納期の特例」により、毎月ではなく、1年度分を次のように2回に分けて納めることが出来るのです。

6月~11月分……12月10日まで

12月~翌年5月分……6月10日まで

少しでも事務の手続きが減る方が良いですよね。

 

源泉所得税の納付(7月10日まで・1月20日まで)

住民税と同じく、給与からは源泉所得税も天引きをします。

天引きをした源泉所得税は、本来は「毎月」税務署へ納めますが、従業員が10人未満の法人には、住民税と同じく「納期の特例」という仕組みがあるため、1年分を次のように2回に分けて納めることが出来るのです。

1月~6月分……7月10日まで

7月~12月分……翌年1月20日まで

住民税とは少し時期がズレている、という点には注意が必要です。

 

法人税等の中間納付(年度頭から8か月目)

会社で支払う税金には、主に法人税・住民税・事業税・消費税の4税目があります。

これらの税金は、確定申告の際に1年度分を一括で支払うのではなく、年度の途中でいくらかを前払いするように決められています。

正しくは「1年度が半分(6ヶ月)経過してから2か月以内」ですので、年度頭から8か月目に支払うことになります。

なお、消費税の中間納付は年1回とは限らず、前期の消費税額に応じて、年1回・年3回・年11回(!)のどれかに変わりますので注意が必要です。

 

年末調整(11月~12月)

役員報酬や給与からは、それぞれの方の所得税の前払いとして、源泉所得税の天引きを行います。

前払いですので、いつかは精算しなければいけない訳です。

所得税は1月~12月の収入にかかるものですので、一般的には12月(1年の最後)の給与等を支払うときに精算をします。

1年間の所得税がなるべくピッタリになるように計算をするのです。

(注)医療費や副業収入などは、年末調整の際には計算に組み込まず、別途確定申告が必要になるため「なるべく」ピッタリという事です。

この手続きを年末調整と言うのですが、資料集めには時間もかかるので、準備は11月から始めましょう。

 

法定調書の提出(1月末まで)

所得税法などの法律で税務署へ提出することが義務となっている書類があります。

それを法定調書と言い、現在では60種類もあるのですが、代表的なものに源泉徴収票があります。

税務署としては特定のお金の動きを把握したいため、このような仕組みが存在するのかもしれません。

 

具体的には、1月~12月の間に支払った給与・退職金・士業などへの報酬・家賃などの情報を取りまとめて提出することになります。

年末年始の忙しい時期に1年分をまとめて作業するのは大変ですので、定期的に整理しておくのがおススメですよ。

 

給与支払報告書の提出(1月末まで)

役員報酬や給与には、個人の税金である所得税と住民税がかかります。

所得税は、毎月の給与等から前払いで天引きをし、年末調整で1年間の所得税がピッタリ計算されます。

一方、住民税には年末調整のような仕組みはありません。

そこで、住民税を計算するために、1年間の収入などを記載した給与支払報告書を作成し、それぞれの方が住んでいる市区町村へ提出をするのです。

共に給与から天引きされる税金ですが、所得税は前払い・住民税は後払い、なのです。

 

償却資産税の申告(1月末まで)

償却資産税とは、固定資産税のことです。

実は、固定資産税は建物や土地だけにかかるものではなく、事業で使っている機械や備品などにもかかるのです。

具体的には、1月1日時点で所有している事業用の資産が対象になるのですが、商品や自動車は対象になりませんし、パソコンなどの家電くらいしか使っていない場合には償却資産税がゼロになるケースも多いです。

法定調書と同じく、年末年始に1年分をまとめて作業するのは大変ですので、定期的に確認をしておきましょう。

 

在庫の棚卸し(決算月)

商品などは購入しただけでは経費にならず、売れた時点ではじめて経費になります。

そこで、どれだけの商品が売れたかを計算する必要があるのですが、一般的には次の図のように計算します。

 

期末の在庫が分かれば、売れた分も分かる、という仕組みになっているのです。

売れた分を個々に把握していくのではなく、期末の在庫を数え、その差額で売れた分(経費)を計算する訳です。

その在庫を数える作業を棚卸しと言うのですが、本来は品質確認などの在庫管理のために行うものですので、追加で税金も計算できるくらいに思ってくださいね。

 

決算・申告・納付(年度末から2か月以内)

1年度の業績を計算することを決算と言い、その決算をベースに税金の申告・納付を行います。

会社の1年間の活動の総まとめであり、経営の軌道修正や次の年度の目標・人件費などを決める材料にもなるものです。

税理士としては、もちろん、間違いや忘れ物などがないようにピッタリ計算をしますが、これらは言ってみれば結果です。

決算に至るまでの過程はどうでしょうか。

数字を経営に活かすためには、ざっくりでも良いので、1年に1回ではなく定期的に数字をまとめて確認するのが良いのかなと思っています。

 

(注)記事作成時点の情報・法令等に基づいております。